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私の知り合いにジェフさん(仮名)という名前のカナダ人宣教師がいる。カナダの電話会社に勤めるエンジニアだったが、日本人に聖書を伝えたくて、仕事をやめて、2年半前に、家族と共に来日した。日本に来てから一年間は日本語学校で勉強した。漢字が好きで、囁き(ささやき)などという字を知っているのに、いまだに、ひらがなを読み違えたりする。今、私と一緒に、週3回日本語を勉強している。
ジェフさんは、普通の欧米系外国人とは、ちょっと違うところがある。まず、握手を好まない。したがって、私は、知り合ってかれこれ一年になるのに、一回しか握手をしたことがない。話す時は、直立不動で、表情をくずさずに話す。ジェスチャーをしながら話すなどということはまずない。相手の目を見ずに、視線をそらして話す。聞いてみると、日本語学校で、日本人は感情を表さずに話し、話す時には顔を直視してはいけないと教えられたとのことだ。良いコミュニケーションをとるために、表情やジェスチャーは大切であることを説明して、このごろは、かなり自然に話せるようになってきた。
さて、カナダに住んでいるジェフさんのお母さんが、このほど、はじめて日本に来た。夫を早く失ったため、ビルの掃除婦をしながら、女手ひとつでジェフさんを育てた人だ。東京見物の合間に回転寿司に連れて行ったそうだ。欧米人には、魚を生で食べるなど思いもよらない人がまだいるが、ジェフさんのお母さんの口には合ったようだ。大変喜んだと言っていた。
特に、メグロのスシが好きです、とジェフさんは言う。メグロのスシ?メグロのサンマは知っているが、メグロにうまいスシ屋があっただろうかと思いめぐらしながら聞いてみると、メグロではなくて、マグロと言いたかったことがわかった。お母さんとふたりでスシを堪能している姿がやっと目に浮かんだ。
ある時は、友人が正月にカンゴクへ行きました、と言ったので、驚いたことがある。私も、大学時代に、友人が学生運動で捕まって、留置場に入れられたことがあるので、それは大変だと思った。それにしても、何故、宣教師の友人が監獄へ?と思い悩んでいると、カンゴクではなくて、韓国(カンコク)であることがわかった。
メグロ、カンゴク、一字の違い、あるいは濁点のあるなしで、日本語はまったく別の言葉になってしまう。外国人にとって、日本語はつくづくやっかいな言語なのだろうと思う。日本語にチャレンジする人に新鮮な敬意を感じているこのごろである。 |